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帰る三人を見送った。男の子は両親と手をつないで、何度も僕たちを振り返っていた。
「見つかって良かったね」
「うん」
「あんなに小さいのに、よく頑張ったよ。きっと不安でいっぱいだったろうな。小さい手で、一生懸命つかんでいるんだよね」
「うん」
「咲?」僕は妻の顔を覗き込んだ。
「え?うん。すごく強い子だと思う」
そう言って妻は無理に笑った。僕の胸がズキンと痛んだ。
「咲、無理しないで」
「無理してない」
「してるよ」僕は妻の目を見た。
「・・・ごめんね。幸ちゃん」妻は悲しそうに謝った。
「謝る必要なんてない。咲は悪くない。誓い、忘れていないよね?」
妻は頷いた。
「咲が安心するなら、何度でも言うよ」僕は妻の両手を握った。
「苦しい時、悲しい時、僕は側にいる。大丈夫だよ。咲」
「うん。大丈夫。幸ちゃんがいるから、大丈夫」妻は静かに笑った。
「続き、回ろうか。あの動物見るんだろ?何だっけあの・・・」
「ハダカデバネズミ」
「うん、それだ!」
僕と妻は手をつないで歩き出した。
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