24人が本棚に入れています
本棚に追加
/55ページ
全てがエブラドドルのフルコースというのは、少しばかりくどくはないか?
とも思ったのだが、シーバの目は自身に満ち溢れている。何か考えがあってのことだろう。
「ほらほら沙華君、食べてみなさい。ソーセージを見抜いた君なら、ちゃんとエブラの味を感じ取れるじゃろう。」
シーバに勧められるがままに、肉団子に箸を伸ばした。
見た目は普通の肉団子だ。
一口大のサイズなので、遠慮なく一つまるまる頬張った。
私は目を見開いて、シーバを見る。
口に入れた瞬間に広がる香りは、まさしくエブラドドルのものだった。
しかし、ソーセージやステーキでの、こってりとしたジャンキーさは皆無で、むしろさっぱりとした味わいだった。
風味こそエブラではあるものの、美味しさのベクトルはまったく逆方向を向いていると言ってもいい。
シーバの種明かしが無かったら、これを同じエブラ料理だとは気がつかなかっただろう。
「これは、美味しいですね...!」
食感は、軟骨入りのつくねだ。
これも所々にコリコリとした食感があり、口の中が楽しい。
私のよく知る鳥の軟骨よりも柔らかく、それでいて物足りなさは感じない。つまり丁度よい硬さだ。
生姜ではない、何か香草が練り込まれてるのだろうか、爽やかな香りが立ち込める。
ステーキの時とはまた違う香りだが、これも非常に良く合う。
スープに入れれば、これ自体が主食になりそうだ。
「そうじゃろう、そうじゃろう。」
むふん、と大きく息を吐く。
私はまた料理に目を戻し、次はかまぼこを手に取る。
純白のかまぼこは今にも光り出しそうなほど綺麗だった。
この白さは、まさしく昨日食べたエブラステーキを思い出す。
ぷるぷると揺れて私を誘っているかのようなかまぼこを、構わずがぶり、と食らいつく。
「んんんん!...これは、また、朝ごはんにぴったりで、美味しい!」
これまた驚きの美味しさだ。
魚のかまぼことは、全くの別物だ。そもそも同一視すること自体が間違っていたようだ。
その似て非なる料理は、ぷるぷるとした見た目とは相反して、かなりしっかりとした食感だった。
素材を活かす味付けというのだろうか、調味料の味は全くしない。
そのかわりにはと言うべきか、全体にレモンのような、柑橘系の香りが醸し出されている。
それが邪魔をするわけではなく、むしろ朝にもってこいの爽やかさなのだ。
最初のコメントを投稿しよう!