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「ごちそうさまでした。」
久しぶりの豪華な食事に、これでもかと感謝の念を込めて、手を合わせた。
「ほっほっほ。あれだけの量を、綺麗に食べきるとは、また驚いたよ。」
「ははは、本当に美味しかったもので、ついつい食べ過ぎちゃいました。」
本当に食べ過ぎた。
立ち上がりたくない。いや、立ち上がりたくても、立ち上がれない。
「なによりの褒め言葉じゃよ。少しゆっくりしていきなさい。」
私が動けないことも、お見通しのようだ。
私はそんなにわかりやすいのだろうか。
自分の食べ過ぎで、ほかのお客さんが来るかもしれない座席を、長時間陣取るのは多少気が引けたが、今動くと気分が悪くなりそうだったので、言葉に甘えて座っている事にした。
幸い、食堂には空席がちらほらとある。
食事が終わって、そろそろ部屋に戻ろうか、といったグループも見受けられる。
私は少しほっとした。
お腹を落ち着けるため、ただただ座って食堂の中を見つめていた。
頭の中は空っぽだった。
たまに朝食の余韻が浮かんだが、深く浸り過ぎると、異常な満腹感も一緒に押し寄せて来るので、すぐさまに抜け出した。
20分ほど経っただろうか。
食堂の中には、私を含めて3人だけになっていた。
つい先ほど、アオコがチケット入りの箱を持って、食堂の入り口を横切ったのが見えた。
その後、こちらに戻った様子はないので、朝食の時間自体が終了間近なのだろう。
ようやくお腹の苦しさも落ち着いてきたので、部屋に戻ろうと立ち上がった。
その時、厨房からシーバが出てきて、こちらへ早足で向かってきた。
「おお、沙華君、よかった、まだいたんじゃな。」
「今部屋に戻ろうと思ったところでした。どうかしましまか?」
「ふむ、さっき伝え忘れた事なんじゃが、この後時間はあるかね?昨日の話の続きをしたいと思っての。」
ああ、と私は頷く。
確かに昨日、詳しく話すと約束していた。
そういえば、何か当てがあるとも、シーバは言っていた。
「ええ、もちろん。時間はあります。むしろ、時間しかありません。」
「ほっほ。よかった。沙華君、10時頃にわしの主屋に来ておくれ。玄関からロビーに向かった先の、更に奥じゃ。」
そう言い残して、シーバは部屋の外へと出ていった。
時計を見ると、まだ8時を回ったばかり。
あと2時間。
どう暇をつぶすかが私の課題となった。
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