2.ラシェーカの光

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一旦冷静に考えよう。 そう心に決め、改めて自分の置かれた状況と、なぜこんなことになっているかを思い返すことにした。 上体を起こしていたが、もう一度仰向けに倒れた。 そちらの方が余計な力が抜けリラックスできる。 さて、では最初から考えていこう。 まず私は今、謎のリュウケツジュモドキの森の中に一人で仰向けに寝ている。 服装は、白衣の仕事着だ。 白衣は、もう白衣とは呼べないほどに汚れている。 この時点でもうなにがなんだかわからない。 リュウケツジュモドキの背は高く、60メートルはあるだろうかというほど。 先端の方に枝葉が集中していて外を確認することはできないが、きらきらと輝いているため、昼間なのだろう。薄暗い森のなかではあるが、その光のおかげで自分の体を目視することができた。 そして。 何故、私はこんなところで一人寝ているか。 その理由はわからない。 思い出せない。 記憶がないことは、多分、この痛む体に関係があるのだろう。 強い外的衝撃を受けると、一時的に記憶喪失に陥ることがある、とどこかで聞いたことがある。 多分それだ。 たとえ全ての記憶を失わなくても、前後の一定期間の記憶だけ失くしてしまうことだってあるだろう。 私は自分がだれだかわかっている。 過去に熊に遭遇したことも覚えている。 ただ何故ここにいるのか、ということがわからないだけなのだ。 そう考えると少し肩の力が抜けた。 全て忘れているわけではない。 もしかしたら森を抜ければ、どこだかわかるかもしれない。 もしわからなくても人家を探せばなんとかなるだろう。 いつまでもここで寝ているよりは、とりあえず、歩き出したほうが身のためだと思い、全身の痛みをこらえつつ、一気に立ち上がった。 少しの時間リラックス状態にあったのが幸いしたのか、体の痛みは先ほどよりも弱まっていた。それでも痛むことには変わりないのだが。 立ち上がってからは、入念にストレッチをした。 もともと体格がいいわけでは無かった。 昔から運動はあまり得意ではなく、その延長線で研究者を生業にしているといっても過言ではない。
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