2.たくさんのびっくり箱

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「さくらは確か、初等科を卒業と同時に、北海道に引っ越したんだったよね」 美百合は龍一に持ってこさせたスパークリングワインのグラスを口に運びながら言う。 「うん、引っ越したっていうより戻ったんだけどね。おじいちゃんの体調が悪くなっちゃって」 アルコールにあまり強くないのか、美百合はグラスワイン半分でもう赤くなっている。 ちなみにさくらの前に出てきたのはオレンジジュースだ。 「あれー、さくらはお酒飲めないの?」 美百合に聞かれ、 「ううん、そんなことはないけど」 「じゃあ、何か飲む?」 「同じもので」 という会話があって初めて、ワインのグラスが出てきたけれど、龍一の歓迎していない感情をひしひしと感じる。 それでも口に含んだワインは、とても美味しかった。
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