2.たくさんのびっくり箱

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さくらの一族は、北海道で企業経営を行っている。 祖父母が代表で健在だったころは、両親と共に、さくらは本土で暮らしていた。 都心にある支店の経営を任されていたからだ。 その頃にさくらと美百合は出会って、同じ学校の初等科で過ごしたわけだが、祖父の体調に不安が出てきて、学校のひと区切りを待って北海道に戻った。 だから出身を聞かれたら、さくらは北海道だと答えている。 でも今は、 「大学がアメリカでね。今はあっちで暮らしてるんだ」 大学在学中にカメラマンという職を得て、生活拠点はアメリカに定まりつつある。 ひとり娘だが両親は元気だし、今は親族経営という時代でもない。 幸いにも両親から、 「さくらの好きにしていいよ」 と言ってもらえているのだが。 「ねぇ美百合、結婚して幸せ?」 つい、さくらは聞いていた。 美百合は、 「ん?」 顔をあげ、よく聞き取れなかったと聞き返してくる。 「ううん、なんでもない」 さくらは首を振る。 「なんでもないよ」
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