1.偶然の再会

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一時帰国したカメラマンの立花さくらは、田舎の景色を撮りたくて、電車とバスを乗り継いで、この村までやってきた。 電車で二時間、バスで一時間揺られる、ちょっとした小旅行気分になれる農村部だ。 この村は、いま立花さくらが生活の拠点としている、アメリカの大規模農家とはぜんぜん違う。 屋根にはどっしりとした瓦が乗り、木製の雨戸がある伝統的な日本家屋。 軒先には草取りカマや一輪車が無造作に立てかけてあり、縁側にはひっそり湯茶の用意がしてある。 休憩時間になると、日に焼けたおばあちゃんたちが集まってくるのだろう。 人に慣れた犬もいるかもしれない。 そんな光景が容易に想像できる、素朴で優しい村だ。 さくらの根源でもある日本という国で、穏やかに、でもしなやかに生きる人々の力強さを、写真に収めてみたかった。
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