2.たくさんのびっくり箱

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ダイニングには、鍋が煮えるグツグツという音だけが響く。 さくらが怒鳴ったあと、誰も何も言わない。 ちょっとその沈黙が怖くて、 「美百合はどうなの」 振り返ったら、 「……さくら」 美百合は何とも表現しづらい顔をしていた。 「美百合……」 笑っているような、泣いているような。 それでも、 「ありがとう、さくら」 という小さな声は聞こえる。 やっぱり、さくらの予感は正しかったのだと、改めて龍一を睨みつけるために視線を戻すと、 ――カタン―― 龍一は椅子から立ち上がる。 「――すまないが、失礼する」 前髪が邪魔をして、その顔は見えない。 さくらに背中を向けると、 「残念ながら今夜は送っていけない。良かったら、泊まっていくといい」 静かにダイニングから出ていった。
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