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3.有坂家の現実
結局その夜は、有坂家に泊まることになった。
普段は夫婦の寝室だろう、二階のダブルベッドの上に美百合と転がる。
「美百合、ごめん。私余計なことを言った」
龍一の言う通り、家庭の事情に他人が踏み込むべきではなかったと思う。
感情にまかせて、土足でズカズカと、あがり込むようなマネをしてしまった。
さくらがこの家を辞した後、もしも美百合の運命が変わってしまったとしても、さくらには責任が取れない。
しかし美百合は、
「ううん、嬉しかった」
首を振る。
「さくらってば、本気で私のことを心配してくれたんだもん。嬉しかったよ」
「でも、美百合」
さくらは言いよどみながら、
「ねえ、私と一緒に家を出ない? ご両親にもちゃんと相談した方がいいよ。いきなりで話しにくいんだったら、いったん北海道の私の家に落ち着いてから――」
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