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夕食を済ませた後、さくらは美百合と一緒に風呂を使わせてもらった。
有坂家の風呂は、ふたりで入っても十分な広さがある。
入浴をすませて二階の寝室にあがってくれば、着替えを準備するために一度来たときとは様子が違っている。
ダブルベッドのシーツは新しいものと取り替えられ、完璧なベッドメイクが施されている。
テーブルの上にはフォークを添えたイチゴと、冷蔵庫にシャンパン。
まるでホテルのサービスだ。
そんな部屋の様子を見て、美百合は意味深にフフッと笑う。
「龍一ってば、さくらのご機嫌を取ろうと必死みたいね」
「私? 何で?」
嫌われた自覚ならあるが、その逆とはどういう意味だ。
目を丸くするさくらに、美百合は、
「さくらが私の友だちで、ここには偶然訪れたんだって、やっと信じたんだよ」
「信じたって、私、ずっとそう言ってるじゃない」
偶然以外の何ものでもない。
そもそも美百合とは小学校時代の幼なじみで、その後、さくらは北海道に引っ越してしまった。
中学も高校も美百合とは違う。
こんな間柄だと、普通なら、約束して会おうなんて考えないだろう。
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