こたつとみかん

こたつから出られない

家電量販店に勤める私は、年末年始の激務で疲れ切っていた。

そして、やっと貰えた連休。

やりたい事は色々あったけど、こたつに入ったら動けなくなったしまった。

どうしよう？　うたた寝を繰り返し、既に一日経過している。

食事どころか水分も取っていない為、トイレにすら行きたいと思わない。

こんな休みで良いのだろうか？　考え方を変えてみよう。

寒空の下、震えながら必死に働いている人たちを思い浮かべてみた。

……優越感が半端ない。もしかして、こたつで過ごす休みって最高の贅沢なのか？

幸いな事に、こたつの上にはみかんが一個あった。みかんで空腹を誤魔化し、水分補給も出来る。暫くはこたつから出ないで過ごせそうだ。

よし、決めた。休みはこたつから出ない。

固い決意を胸に秘め、みかんに手を伸ばす。

しかし、体が硬直していたのだろう。手に力が入らず、みかんを落としてしまった。

コロコロと転がって行くみかん。

そして、部屋の隅っこでピタリと止まる。

唯一の食糧が逃げ出してしまった。