1人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
はなのさかりを過ぎたころ
しおれた肌を撫でまわす
触れあう皮膚の皺と皺
擦りつけ生まれる虚しさへ
転がり落ちればよみがえる
はるか彼方の恋のこと
ふたり浜辺にしゃがみこむ
日差しにかざしたシーグラス
でたらめにさらう波が
ロマンチックに煌めいた
濡れた手のひらに触れたとき
正しい答えを選んだら
握り返すなんてできなくて
離れることもできなくて
目を臥せるしかなかったの
はなのさかりを過ぎたころ
褪せた瞳を覗きこむ
交じらぬ視線の先と先
焼けつき焦がれる危うさへ
浮かび上がれば消え失せる
はるか昔の夜のこと
ひとり窓辺に座り込む
ギターを抱えたシルエット
気まぐれに弾く指先は
センチメンタルを震わせた
さみしい背中に触れたとき
正しい言葉を選んだら
死なないでなんて言えなくて
そばにいてとも言えなくて
口をつぐむしかなかったの
はなのさかりを過ぎたころ
枯れたこころが項垂れる
酒に溺れた夜と夜
熟れて傷んだ静けさへ
身を捧げれば耐えられる
はるか遠くの君のこと
ひたり喉元を滑り落ちる
味のなくなったアルコール
ぱちぱち弾ける炭酸を
思い出と共にかき混ぜた
君の後悔に触れたとき
選べなかった真実と
散ったはなびらが帰るなら
グラスに揺れる魂を
悪魔に売っても構わない
最初のコメントを投稿しよう!