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今さら目を見て呼ぶなんて
多分ぼくにはできないよ
あなただってそうでしょう
何度も熱を分かち合い
過ごした夜がくれたのは
思い出だけじゃないでしょう
どうして言葉を求めるの
ぼくの両頬をはさんだり
潤んだ瞳で見つめたり
薄情なあなたらしくもない
その手が震えていることなんて
気づかなければよかったね
あなたが心を拒むのは
きっとおそろしいからでしょう
募るもどかしさはあるけれど
ぼくはそれでもいいんだよ
理由なんてなくたって
そばにいることはできるから
伝わらなくてもいいんだよ
怯えたあなたが息を呑む
何も言わなくていいでしょう
華奢な背中に手を添える
ぼくが心をあげるから
力の限り抱きしめる
肩を濡らすのは汗か涙か
息を吸って息を吐く
同じ空気を分かち合い
あなたとぼくがここにいる
今も確かに生きている
ただそれだけでいいでしょう
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