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「ご苦労さま。ありがとう、荷物すべて持ってもらって」
「いや。腹減った」
「うん。すぐに用意するから、それまで寛いでいて」
「おう」
スーパーからの帰り道。ふたつの買い物を手にしてマンションへ着いた風城を、申し訳なさそうな表情で蒼生が労う。
風城はリビングのソファに身体を投げだし、蒼生はキッチンに向かうと荷物を解き料理に取りかかる。壁にかかるエプロンを身につけると、手を洗いうがいをして準備はととのった。
学校での授業と放課後の部活動で疲れているのだろう、風城は程なくすると静かな寝息を立て始めた。そうとは知らない蒼生は、切り分けた具材を鍋に入れハヤシライスに仕上げてゆく。
「できたよ。成藍くん、成藍くん?」
すべてを終えるとテーブルセッティングを済ませ、リビングでくつろいているだろう風城を呼びにきた蒼生。けれどもソファに横たわる長躯は、返事の代わりに寝息を返す。
「なんだ、寝ちゃったのか」
ソファの手前でひざをつき、彼を起こさないようそっと精悍な寝顔をのぞき込む。
「ふふ。一人前の男みたいな顔して」
陽に灼けた肌は健康的で、けれども若さゆえか決して荒れたようにはなく、むしろ艶やかでよく磨かれたチェリーウッドの家具みたいで美しい。
丸みを帯びた少年特有の輪郭は頬が削げシャープとなり、大きくつぶらだった瞳は今では切れ長で色気がある。ノーブルな鼻筋と意志の強そうな眉が、風城の男らしさを強調している。
「これだけハンサムだったら、きっと女の子からモテるよね」
狩りの合い間に休息する豹のような風城の寝顔を見つめていると、どうしたわけか蒼生の心に説明のつかない妙な感情が芽生えてきた。
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