Karte.2 十年の時を超えた想い

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「ご苦労さま。ありがとう、荷物すべて持ってもらって」 「いや。腹減った」 「うん。すぐに用意するから、それまで寛いでいて」 「おう」  スーパーからの帰り道。ふたつの買い物を手にしてマンションへ着いた風城を、申し訳なさそうな表情で蒼生が労う。  風城はリビングのソファに身体を投げだし、蒼生はキッチンに向かうと荷物を解き料理に取りかかる。壁にかかるエプロンを身につけると、手を洗いうがいをして準備はととのった。  学校での授業と放課後の部活動で疲れているのだろう、風城は程なくすると静かな寝息を立て始めた。そうとは知らない蒼生は、切り分けた具材を鍋に入れハヤシライスに仕上げてゆく。 「できたよ。成藍くん、成藍くん?」  すべてを終えるとテーブルセッティングを済ませ、リビングでくつろいているだろう風城を呼びにきた蒼生。けれどもソファに横たわる長躯は、返事の代わりに寝息を返す。 「なんだ、寝ちゃったのか」  ソファの手前でひざをつき、彼を起こさないようそっと精悍な寝顔をのぞき込む。 「ふふ。一人前の男みたいな顔して」  陽に灼けた肌は健康的で、けれども若さゆえか決して荒れたようにはなく、むしろ艶やかでよく磨かれたチェリーウッドの家具みたいで美しい。  丸みを帯びた少年特有の輪郭は頬が削げシャープとなり、大きくつぶらだった瞳は今では切れ長で色気がある。ノーブルな鼻筋と意志の強そうな眉が、風城の男らしさを強調している。 「これだけハンサムだったら、きっと女の子からモテるよね」  狩りの合い間に休息する豹のような風城の寝顔を見つめていると、どうしたわけか蒼生の(なか)に説明のつかない妙な感情が芽生えてきた。
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