Karte.1 幼い心の純情と研修医

3/12
前へ
/51ページ
次へ
 春日部総合病院に配置された臨床研修医は蒼生を含め五人。  指導医として彼らを担当する医師”木在(きさら) 尚幸(なおゆき)”が、親身になって彼らの指導に当たる。  内容は多岐にわたり、スムーズな乳児健診や鎮痛剤による呼吸制御やアナフィラキシーなど、学習過程で習得したアレルギーに対する対応も事細かく指導される。  研修医のなかでも秀でた才をもつ蒼生は、同期たちには煙たがられる存在だ。逆に呑み込みの速さでも優秀である蒼生を、木在は特に期待の目を向け接していた。 「蒼生くん。今日はこれから予定あるかい?」 「木在先生。お疲れ様です。いえ、今日はもう特に何もないので、カンファレンスでのプレゼンテーションを見直そうと思っています」  カンファレンスとは早朝より行われる会議のこと。  後期研修医である蒼生は、担当患者――蒼生は小児科の担当医の補佐を務める――の病態のアプローチ法や評価をしたり、担当医やスタッフとディスカッションを交わすのが日課だ。  ときには厳しい指導の言葉も受けるが、それも含め研修医にとってはスキルの向上につながるので、非常に実のある時間と言える。
/51ページ

最初のコメントを投稿しよう!

230人が本棚に入れています
本棚に追加