Karte.2 十年の時を超えた想い

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「千隼っ!」  木在めがけて駆けよる風城がこぶしをくり出す。  重い一発が頬にめり込むと弾き飛ばされ、リビングとを隔てるドアに激突する。木枠のガラスドアが音をあげ、床に投げ出された木在のうえに破片が散乱した。  一方、木在に抱き上げられていた蒼生は支えがなくなり床に落下するも、寸前に伸びる風城の両腕にバウンドして難を逃れる。 「おい、平気か」 「成藍……助けにきて……くれ、たんだ」 「悪い、遅くなった」  力づよい腕に収まり、ほっと安堵の息がこぼれる。胸を打つ鼓動が速いことから、今まで風城が走っていたことがうかがえた。  玄関では管理人が青い顔をして立ち、蒼生たちの様子をうかがっている。風城が管理人に「警察を」と口にした直後、蒼生が「待って」とそれを止めた。 「お願い。警察沙汰にはしないで」  風城と管理人両名に蒼生は乞う。すると信じられないとでもいうかのように、風城は目を瞠ると蒼生に問う。 「どうして。あんなやつ庇うのか」 「もとはといえば、僕が木在さんの気持ちに気づかないまま、彼を苦しめてきたのがいけなかったんだ。それに警察が関与すれば、あのひとの未来が壊れてしまう」 「だからお願い」と、あがる息で蒼生は願う。 「――くそっ!」  悔しさに歪む顔をそむけた風城は口唇を噛むと、寝室まで蒼生を運びベッドに寝かせてやる。そしてひと言「わかった。警察には連絡しねえ」と、蒼生に向かって約束した。 「ありがとう」 「いいから少し休め」 「うん」  火照る蒼生の頬に手を添える風城。 「後のことは任せろ」と頼もしい言葉で、蒼生を安心させるのだった。
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