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〇
薄暗い寝室。互いの心音が聴こえそうな静寂のなか、ベッドのうえと床との距離を縮めるべく風城が行動を起こす。
壁際に後ずさる蒼生を追い、ぎしりとマットレスを軋ませながら一歩また一歩とひざを進め、とうとう蒼生を追い込んだ。
壁に背を這わす蒼生のサイドに手をつき、狼狽えるおもてに顔を近づけ口をひらく風城。
「プレゼントくれよ、誕生日の」
「え、あ、ああ……それならリビングに――」
「そうじゃねえ。無自覚にも程があるだろ。もう何度も言ったよな、俺は千隼が好きだって。ダチとか兄弟みてーな好きじゃねえぞ、心も身体も俺だけのものにしてえ好きだ」
最後に「言っとくが拒否権はねえからな」とささやくと、蒼生の口唇に自分のそれを重ねた。
「っ、ぅ……っ」
初めは驚き目を見開く蒼生であったが、徐々に意識は肉感的な風城の口唇に奪われていき、ついには彼の背に腕をまわし甘受してしまう。
久しく触れ合うことのなかった他人の肌が、眠っていた蒼生の官能を沸々と呼び起こし淫らな気持ちにさせる。
先ほど振るわれた木在の暴力とは違い、それは甘やかで蜜なる快楽を蒼生に齎した。それとは逆に風城のほうは、若さ故かまるで奪うような欲望を蒼生に向ける。
「んっ、ふ、ぅ……っ」
深く深く、ただ愛する者の深きを暴くかのような、容赦ない風城の口づけ。
馳走をまえにのどを鳴らす猛獣となった風城は、半開く蒼生の口唇に舌をつき入れ余すことなくそれを味わう。
逃げられないようサイドについていた一方の手が蒼生のあごを捉え、もう片方は肩をなぞり脇腹を這うと尻へと向かう。その瞬間、蒼生に理性が戻った。
「やっ、あっ……ダ、ダメっ」
首をふり口づけから逃れると、息も絶え絶えそう断わる。
「――どうしてだ。俺のキスは受け入れてくれたじゃねえか。それって、千隼も俺のことが好きってことなんじゃねーの」
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