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風城の言うことはもっともだった。
蒼生は彼のことが好きだ。心の底から愛している。あえて口にしなくとも、蒼生の態度が表情が物語っている。
けど、だからといって、その想いを受け入れていいものか、蒼生のなかで葛藤が生じてしまう。彼はまだ未成年、対する蒼生は人生の半分を生きた大人だ。
世間の目もそうだが、仮に想いを受け入れてしまえば、彼の母親にどう説明すればいい。
これから大学にいき多くを学び、行く行くは社会人として羽ばたくだろう。その間には魅力的な女性と出逢い、恋をして別れを経験し、そしてまた恋をするのだ。
最後にと決めた女性が風城の許に現れたとき、男として最高の幸せを得て家庭を築き、子を儲け育てまた新たな未来の希望を手に入れるのだ。
息子が歩む道を見守るであろう母親から、蒼生が芽を摘んでしまっていいはずがない。彼の幸せをともに見守らなくてはいけない、この自分が―――
そこまで考え胸が締めつけられると、気づいてはけなかった後悔の感情が涙となって、蒼生の瞳から流れ落ちて止まらなくなった。
それを黙ってみていた風城が、蒼生を引きよせ胸にとじ込める。
「俺の気持ちは迷惑か」
「ち、ちがうっ、そうじゃないっ」
「だったら、どうして泣く」
「それは……」
どう答えればいいのいうのか。
己の気持ちはすでに伝わっている。それは訊かなくとも理解できた。かといって、自身に向けられる風城の気持ちを受け取っていいものか。
言いよどんでいると、それを聡く酌んだ風城が「迷いなんて捨てちまえ」といい、更に抱きしめる腕に力をこめると蒼生のうなじに口唇を這わす。
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