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「うん、わかった。成藍くんの気持ちは、ちゃんと僕のここに伝わったよ」
蒼生は左の胸に手を当てここと称し、その手を少年の頭に置きひと撫でする。
「けどね、きみはまだ八歳。僕と恋をするには早いかな」
「じゃあ!……じゃあ、何歳になったら俺と恋してくれるの」
「成藍くんが大きくなっても、まだ僕のことを好きでいてくれたら、その時にまた告白をしてくれるかい? そうだね、今から十年後」
「わかった。俺きっとデカくなって、先生を迎えにいくからな。それまで待ってろよ。あいつ、木在ってやつ、先生のこと狙ってるから気をつけろよ」
曇りのない目から一転、今度は燃えるような双眸に変え熱く語る。こんな小さな少年でも、ひとりの男として恋をしているのだ。
けれど蒼生からしてみれば、相手は八歳の少年だ。今年で二十八歳になる蒼生にとって、子供の考えだからと深く取ることはなかった。
「それで木在先生にあんなことをしたんだね。ふふ、うん了解。注意しておくよ」
「じゃあほら、シートベルトをして」と少年に促すと、「はやく帰らないとあ母さんが心配しているよ」と言い含めて車を発車させた。
母親の許に送り届けると、少年はこっぴどく怒られ自室で謹慎されられる。何度も謝られた蒼生は、お気になさらずと断わり、少年に栄養を取らせて安静にと伝え後にした。
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