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360度ぐるりと見回しながらゆっくりとベンチへ向かう。下手なダンスをしているようだ。息が白くなって登っていく……。
腰かけてコーヒーの紙コップを両手で包み、小さな暖を取りながらいろいろなことを考える。
最近流行りの曲をうろ覚えで口ずさみ、昔好きだったバンドの今を思う。好きだった……いや、今も好きだ。ただもう何年も聞いていないし、新しい曲も知らない。
好きな小説家の名前を並べる……この人の作品は全部読んだ。そう、だいたい7年前に読み切った。最近映画化したが、その題名は知らなかった。
「遅れてるなぁ……」
でも反対にCM女王とかランキング1位のアイドルは知ってる……昔は興味が無かった流行りのもの。
いや、だからやっぱり遅れてるんだ。全国民が知っているレベルの事柄しか知らないのだ。
「そんなに忙しいか……?」
そんなことは無い。せかせか生きるのが嫌で、季節を感じたり空を見上げたりしたくて、たくさんあった趣味から離れ友人の誘いも極力断って来たのだから。
そうして今、こうやって丘の上から景色を堪能している。
気付けばとっくに冷えたコーヒーが、今度は指先の体温を奪っているようだった。
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