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あまり仲が良いとは言えないが両親は健在で、市内だが別々に暮らしている。月に1度は実家に帰り、母の作った夕飯を食べる。その時に感じる絶対的な存在と安堵。
人並みの問題を抱え、人並みの苦労をしてきた。自分も、両親も、5年前に続けて亡くなった祖父母も。祖母が春先に作っていたよもぎもちはもう食べられないし、母が作る料理もいつかは食べられなくなる。
当たり前は簡単に壊れてしまう。
お気に入りの喫茶店が創業60年で閉店した。お気に入りと言っても、3度しか足を運んでいないが……ただ見慣れた景色は少しずつ改変して行き、気付かぬうちにまるで違う街にすり変わる。
小さな商店がクリーニング屋になったかと思えばシャッターが降ろされ、解体され、パーキングになる。
元々の建物が思い出せなくなると、記憶のいい加減さに嫌気が差し不安に駆られる。どんなに忘れたくないことも、こうして着々と薄れていってしまうのだろうか。
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