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一緒に来るはずだった。ヨハネス・フェルメールとそれに関する絵画展。代表作「真珠の耳飾りの女」を見れば、皆が「あぁ、見たことがある」と思うだろう。
私はフェルメールの描く風俗画が好きだ。隠れて酒を飲み、主人が不在なのをいい事に愛人へ手紙を書く女たち。見て見ぬふりをする女中。抑圧された生活を彷彿とさせる鳥籠。
今日、初めて原画を目にした。大盛況なようで、人波は列を無し、順路に沿って流れていく。私もその中の一人。
一人で美術館に来るのは慣れていたが、こうも賑わっていると居心地が悪い。
序盤は関連する画家の作品が並んでいたが、あまり思い出せない。20分程進んだだろうか、そろそろ息が詰まりそうになった頃、それは私を見ていた。
黄色いガウンの女が、こちらを見ている。
それまでの空気が一瞬止まり、私はまばたきを忘れていた。
私が絵を見ているのでは無い。絵が、私たちを見ているのだ。
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