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「サッキーさん! サッキーさん!」
「……ん、あぁ。寝てた」
「もう、夕方だよ。僕もお絵描き終わっちゃった。ふふ」
「わっ、尚くん……私を描いてたの!?」
「うん、無防備に寝ている姿が素敵だった」
「変態だな」
「なんとでも?」
そう。
だから、たまには息抜きして?
でもきっと書くことが楽しいんだよね。
だから、人を楽しませられるんだよね。
僕は、咲さんの絵をスケッチブックから切り取って手渡した。
いつか咲さんが手の届かないところに行きそうになっても……ずっと、繋がっていたいから。
僕のわがままだってわかってる。
でもね。咲さん。
僕が毎日頑張れるのもキミのおかげだよ。
口が避けても本人には恥ずかしくて面と向かって言えないけど。
今日もキミの物語は何千、何万の人の目に触れていると考えると……僕の存在は霞むほどちっぽけだけれど……それでもいつか、キミを唸らせるような男になりたいと思う。
「あ、咲さん」
「ん?」
「すごく遅くなっちゃったけど、お誕生日プレゼントあげる」
「覚えててくれたの?」
「もちろん」
僕が渾身の出来の『サッキーさん人形』を渡すと、喜んでくれると思ったらみるみる顔が青ざめていく。
どうして?
「へ、へ……」
「ん? 僕の愛が詰まってるんだよ」
「この、変態野郎~~~~!!!!」
そして。
――バシッ
っと一発くらったビンタはなかなか痛くて。
僕は……どうしてか幸せを感じてしまった。
まだ見ぬ世界を見れた気がするよ、咲さん。
ふふ。
【おわり】
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