4. 事件

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 中野さんはやはり精神的ショックが大きかったのだろう、車の中では無言だった。その中野さんの肩を長谷部がずっと抱いていた。 「そもそもキャンプするのに、ふわふわのミニスカートにヒールってのはどうなんだ……」  突然助手席の柏木が、俺がフキに言った事と同じ様な、さも中野さん側にも問題ありな言葉を発した。  俺はバックミラー越しに、中野さんと長谷部の表情を覗き見た。  中野さんは、声もなく窓の外を見ながら悔し涙を流していて、それを長谷部があやすように彼女の肩をポンポンと叩いていた。  おそらく男たちの誰もが柏木の意見に同意だったろうが、やはり意見する時と場所は選ぶべきだと思った俺は、「やめろよ……」と一言だけ言った。  車内の空気が(よど)む。
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