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フキは俺から目を逸らしたまま、小さな声でつぶやいた。
「弟が……」
「え? 弟?」
たしかフキは一人っ子だと聞いていたが、弟とは……
「母親がさ、この前産んだんだ」
「は?」
その言葉に俺は頭が混乱した。
ーーフキに弟ができた……?
「フキの母親って何歳なんだ?」
「四十歳。私を二十歳で産んでる」
「あ、ありえるか。おめでとう」
俺は何も考えずにそう伝えた。それに対してフキは、逸らしていた目を俺に向け、口許を歪ませた。
「おめでとうじゃないよ! これで私、さらに孤立しちゃうわ、家でさ」
「あ……」
今日のフキは箸が進まない。
「そういえば前に言ってたよな。一週間家出しても親は何も言わないとか」
「だってあの人達は私に関心ないもの」
以前聞いたことと同じ事をフキはまた言った。
「もともと私になんか関心ないのに、弟が生まれたんだよ。さらに無関心になるよね」
フキはボソボソとつぶやいた。
そんなときでもフキは綺麗だと、俺は不謹慎にも思いながら彼女を見つめた。
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