5/21
前へ
/21ページ
次へ
田舎道、青い空。夏寄りの秋晴れ。 俺には快適。淳にはきっと暑過ぎ…… それでも真夏よかマシだろ。 スーーーっとコンクリート上を滑るチャリ。 大通りを避けて田んぼ道を抜け海沿いに出る。 「あ!」 漁港に差し掛かり前方に居たのは漁師の升さん。 「淳、升さん」 「ん、升さんだ」 近付いたトコでチャリを止めて声を掛けた。 淳は地に足を着けずに俺の背中に寄り掛かる。 淳の温度、男の身体、なんも柔くねぇのに、 柔らかに感じる優しい重み。 皮膚が触れ合った訳でもねぇのに 妙にそこ意識して、背中がむず痒い。 だいぶ一緒に過ごして来たにも関わらず、 最初の頃と全く変わらない感覚。 キスよかさ、身体重ねるよかさ、 こういうのに俺は倍、敏感になる。 そーいうのムッツリなんかな? 些細な事。何気無くて、普通で、 何の意図もなく触れ合う温度…… 「升さん!」 「おーー、淳、勇、日曜なのに店休みー?」 「うす、今日だけ」 「ほーーー、俺はほれ、網の手入れ、暇なら手伝え」 升さんの言葉を遮るように走り出す。 淳が慌てて俺のTシャツを掴む。 「んじや、俺たち急ぐんでー」 通り過ぎていく升さんに、大きく手を振った。 淳は後ろでぺこりと頭を下げる。 「よぉーー帰り道またここ寄れよぉ」 升さんが叫ぶ 「気、むいたらーいきまーーす」
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!

31人が本棚に入れています
本棚に追加