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「ちょっと、ババァなんて、失礼じゃないですかっ」
野次を飛ばした後ろの方の男性客を睨みながら、大声で言い返した。
「きっ木原さん、どうしましょ」
5番レジ係男子大学生 湯浅 守20歳は引きつった顔で木原 愛を思わず凝視した。
男性客に売られた喧嘩を買ったのは ベテラン買い物客ではなく、木原 愛だった。
「従業員のくせに客に対してなんだ、お前なんかじゃ話にならん。責任者呼べ」
50代半ばといったところの男性客の怒りの流れ弾が木原 愛へ命中した。
「かしこまりました。お並びのお客様がいらっしゃいますので、恐れ入りますが、お客様こちらにお越しください」
大声で男性客に呼びかける愛。言い方は丁寧だが、愛は心の中で
「望むところじゃ、やったろうやないか。こっち来いや。おっさん」
と、だんじり祭りとねぶた祭りが同時開催中のごとく、熱く煮えたぎっていた。
トラブルのきっかけを作ったベテラン買い物客に対しても
「お客様、すみませんが、サービスカウンターでお伺い致します。カゴをお預かりします」
3分前までの財布を落とした深刻顔から一転、今や、だんじりの上でハネトを踊る愛にとって怖いものはない。毅然とした態度でそう宣言すると、次で並んでいるお客たちに
「おまたせいたしました」
丁寧に頭を下げて、呆然としている湯浅に
「レジお願いします」
と言い残して、二人の厄介な客を引き連れてサービスカウンターに向かった。
サービスカウンター前で男性客が
「だいたい、あんたがわけわからんことレジの子に怒るからやろ。めんどくさい」
ベテラン買い物客はかおを真っ赤にして怒り出した
「怒ってませんよ。人をクレーマー呼ばわりしないでください」
「ちょっと待ってください。お客様何があったのですか」
愛は冷静さを取り戻して、ゆっくりとした口調で問いかけた。
「このクーポン使えないって言うのよ。前は使えたのよ。おかしいでしょ」
愛はハッとした。忙しさと男性客からの野次騒動でよく顔を見ていなかったが、グーグル検索 三週間前 課長 クーポン 文句女 だ。
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