第1章 私を本気にさせた悲しい出来事

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「まぁ、失礼な人ね。あなたには関係ないことでしょ。お黙りなさい」 クーポン女は顔を真っ赤に高揚させて、男性客に対して上から目線的怒りを爆発させた 「あなたじゃ話にならないわ。上の人を呼びなさい」 命令口調のクーポン女に 「お客様、三週間前の1月20日午前10時30分頃ご来店されましたね。接客したのは私です。その時このクーポンは使えない事ご説明しました」 クーポン女を真っ直ぐに見つめて、事件解決前の名探偵口調で流ちょうに話し出した。 「私は忙しいのよ。いつ来たのか何時とか覚えてないわよ。キチンと対応してくれたのは男性の方。あなたなんかじゃないわよ。早く、呼びなさい」 後半はヒステリックに大声でクーポン女は叫んだ。 面倒なことは戦わず、事流れ主義の上司は呼べない。絶対に。 三週間前、援軍だと思って呼んだら、すぐ敵軍に飲み込まれて、無条件降伏した。 「呼ばんでええで、ねぇちゃん」 横から男性客が話に割って入って来た。 愛の心の声が通じたのだろうか。 「土曜日で混んでるのに、こんな事でなぁ。あんた、クーポン使えへんの知ってて、わざとやってるやろ。上品な言い方して、やってる事下品極まりないで、なぁ」 愛に向かって同意を求めた。 「はい」 思わず 愛は男性客に心の底から同意した。 「うまぁ、あなた客に向かって、わざとやってると思ってるの。侮辱よ。名誉毀損よ。責任者出しなさい」 ここまで来たら絶対に負けられない戦いだ。共通の敵を前に、男性客と愛は強い絆で同盟軍の狼煙を上げた。 「よっしゃ、わかった。確かにワシは口悪いし名誉毀損でも何でも罰は受けよう。そやけど、あんたのやってる事はスーパーに損害与えてるんやからなぁ。警察に判断してもらおうやないか。ワシが通報するわ」 ポケットからスマホを取り出した男性客。 少し動揺したクーポン女は、目を丸く見開いた。アイメイクが濃すぎて真っ黒なパンダ目だが、わずかに白目が見えた。 「不愉快よ。もういいわ。こんな店二度と来ないわ。あなたの名前、木原ね。しかるべきところに訴えるから」 捨てセリフを吐いて買い物カゴもそのままに混雑している店内に消えていった。 敵軍退散。男性客と愛は戦いに勝利した。
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