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ピッピッピッピッ、甲高い電子音、レジ係の声も幾分緩やかになってきた。
列もなくなり、並ばなくても直ぐお会計できるようになっていた。
「売り場出ると直ぐお客さんに捕まっちゃって、遅くなってごめんね」
食品レジ主任の神田 幸子(かんだゆきこ)がサービスカウンターに帰ってきた。
「なんかあった」
ファイルの書類を出しながら神田主任は愛に聞いてきた。
「もぉー主任ー来ましたよ。あのクーポン 女が」
破れたシフト表をセロテープで補強しながら、クーポン の戦いを思い出したのか興奮気味に主任に訴えていた。
「やだっ。また使わせろって言ってきたの。もぉ今日も500円過不足出る。課長ーーー、しっかりしてよ。ほんまに」
主任も三週間前課長があっさりクーポン使ったことが許せなかった。
かなり 課長に抗議したが、仕方がないよ。後うまくやってよ。と簡単にかわされた。
食品レジ主任神田にとって、遺憾だ、絶対に忘れられない事件だ。
「主任っ。今日は勝ちました。クーポン 断りました」
ゆっくり勝利を噛みしめながら愛は答えた。
「えええええ、うそっ、マジで、あの課長が」
手に持った書類をバンバンカウンターに叩きつける神田主任。
「主任、課長は呼びませんでした」
「えっそうなん。それ正解。大正解。でも責任者呼べってうるさかったでしょ。あっ店長来てくれたの」
「いぇ店長も呼んでません。最強の助っ人がやっつけてくれました」
「ええっーと、誰、誰、そんな人いる」
「FBI捜査官です」
「ピンポーン」
「おっ3番レジ。行ってきます」
目が点になった神田主任をカウンターに残して、3番レジに走っていく愛。
「うふふふ」
思い出して笑顔になる愛。男性客は黒い野球帽子をかぶっていた。
その帽子には、大きくある文字が黄色い糸で刺繍されていた。
( F B I)と。
サービスカウンターに帰ってきた愛に主任が食いつく。
今度はちゃんと説明している様子の愛でした。
「もぉーしょーもないジョーダン言わないでよ。びっくりするわ」
「すみません」
「でも、よかったわ。お疲れ様。愛ちゃん」
プルルルル。サービスカウンターの電話が鳴った。
「はい、食品レジ木原です」
「えっ。はい木原愛は私です」
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