第1章 私を本気にさせた悲しい出来事

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ピッピッピッピッ、甲高い電子音、レジ係の声も幾分緩やかになってきた。 列もなくなり、並ばなくても直ぐお会計できるようになっていた。 「売り場出ると直ぐお客さんに捕まっちゃって、遅くなってごめんね」 食品レジ主任の神田 幸子(かんだゆきこ)がサービスカウンターに帰ってきた。 「なんかあった」 ファイルの書類を出しながら神田主任は愛に聞いてきた。 「もぉー主任ー来ましたよ。あのクーポン 女が」 破れたシフト表をセロテープで補強しながら、クーポン の戦いを思い出したのか興奮気味に主任に訴えていた。 「やだっ。また使わせろって言ってきたの。もぉ今日も500円過不足出る。課長ーーー、しっかりしてよ。ほんまに」 主任も三週間前課長があっさりクーポン使ったことが許せなかった。 かなり 課長に抗議したが、仕方がないよ。後うまくやってよ。と簡単にかわされた。 食品レジ主任神田にとって、遺憾だ、絶対に忘れられない事件だ。 「主任っ。今日は勝ちました。クーポン 断りました」 ゆっくり勝利を噛みしめながら愛は答えた。 「えええええ、うそっ、マジで、あの課長が」 手に持った書類をバンバンカウンターに叩きつける神田主任。 「主任、課長は呼びませんでした」 「えっそうなん。それ正解。大正解。でも責任者呼べってうるさかったでしょ。あっ店長来てくれたの」 「いぇ店長も呼んでません。最強の助っ人がやっつけてくれました」 「ええっーと、誰、誰、そんな人いる」 「FBI捜査官です」 「ピンポーン」 「おっ3番レジ。行ってきます」 目が点になった神田主任をカウンターに残して、3番レジに走っていく愛。 「うふふふ」 思い出して笑顔になる愛。男性客は黒い野球帽子をかぶっていた。 その帽子には、大きくある文字が黄色い糸で刺繍されていた。 ( F B I)と。 サービスカウンターに帰ってきた愛に主任が食いつく。 今度はちゃんと説明している様子の愛でした。 「もぉーしょーもないジョーダン言わないでよ。びっくりするわ」 「すみません」 「でも、よかったわ。お疲れ様。愛ちゃん」 プルルルル。サービスカウンターの電話が鳴った。 「はい、食品レジ木原です」 「えっ。はい木原愛は私です」
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