第1章 私を本気にさせた悲しい出来事

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2018年 2月10日 土曜日 午後6時15分 Hikariスーパー従業員ロッカールーム 「ああー疲れたぁ」 つい口から出てしまう。 「お疲れさまですぅ」 「いそがしかったなぁー」 「もう、時間なかったし、品出しできひんかったわぁ」 「しょうがないわ、レジ入れって言われたんやし。あれやれ、これやれって。あーーーつかれたぁーー」 土曜日午後6時は店内も混むが、ロッカールームも激混み状態。 だが、退店時間厳守のため、のんびり、まったり、着替えてられない。 皆、口も手も倍速で動かしながら、帰り支度をする。 激混み状態は3分で平静を取り戻す。皆嵐のように立ち去った後、残されたのは ロッカーに頭をつけて放心状態で棒立ちの木原 愛。 「愛さーん、もう帰りますよ、ええーまだ着替えてないんですか。早く早く」 後輩の八代真美が急かしながら、愛をどかしてロッカーを開ける。 愛の 着替えの服やカバンを出して、 「愛さん、早くしないと、間に合いませんよ。もぉ」 「うん、真美ちゃん、ありがとね。急に睡魔が……」 「寝るなー、寝ると始末書が待ってるぞぉー。愛さーん」 「うん、うん、私らにとって始末書は死を意味しますから……」 愛が最後の力を振り絞るように着替えを終えると、真美が素早く制服をハンガーにかけてロッカーを締めて、愛のカバンを持つ。 「早く早く、愛さん」 「はいはい」 ドタバタとロッカールームを出ていく二人。 「29分スキャン。ギリギリセーーーフ」 「ヤッタァ。始末書回避。耐えタァ」 ハイタッチで喜びを分かち合う、愛と真美。 「真美ちゃんのお陰です。ありがとう」 「いやだぁ、愛さん今日は大変でしたもんね。お疲れ様です」 「いえいえ、お疲れ様でした。あっ」 急に何かを思い出した愛。 「えっどうしたんですか」 「私落し物したんだ」 「ええー何を、どこでですか」 「いやっ、落し物が届いてるって管理事務所から電話があって」 従業員出入り口前の管理事務所に立ち寄る愛。 「食品レジの木原 愛です。落し物お預かりしていただいて」 「あーー木原さんね」 愛の名札を確認した事務職員は奥のロッカーから何かを出した。 「はいどうぞ。確認お願いしますね」 愛の手に食品レジ 木原 愛様と書かれた一通の封筒が手渡された。
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