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「おいっ。なんか言えよ。喋れねぇのか?」
とある中学校の昼休み、ある教室での出来事。北原隆太はある女子に向かって怒鳴っていた。いつもの光景であるためか、周りの生徒は誰も気にしていない。助ける様子は全くない。
「そろそろやめとけよ。どうせ反応しないって。それより外行こうぜ。」
隆太に向かって喋っている体格の良い少年、小田原和哉はなんとか隆太を引っ張り出そうとしている。
「うるせぇよ。こいつが反応するまで俺は動かねぇよ。」
そう言って隆太はどこからか持ってきたライターの火をつけた。
「なんか言わなきゃ火傷しちゃうよぉ。」
隆太はそう言って目の前にいる女子に、火のついているライターを近づけた。
「おい隆太! それどこから持ってきたんだよ! 流石にやめろって!」
和哉は隆太を全力で止めるため、隆太の体を押さえつけようとした。しかし、隆太は和哉を避けようと体を反らした。その瞬間、目の前の女子の、長い髪の毛にライターが当たり、引火してしまった。
「やべぇよ。何やってんだよ!」
和哉は隆太を責める。
「知らねぇよ。お前が押したからだろ!俺は何もしてねぇよ。」
隆太と和哉は罪のなすりつけあいをしていた。しかし、緊迫した様子はなく、2人とも笑顔であった。
「早く外行こうぜ。」
和哉はそう言うと、隆太と廊下にスタスタと出て行ってしまった。
--また、この夢だ。
ワンルームのど真ん中に敷いてある布団から、ガバッと勢いよく上半身を持ち上げた隆太はとても気分が悪そうだ。
--あぁ、頭痛いな。くそっ、あの女、今思い出しても気分が悪くなる。どうせろくな人生、送っていないんだろうな。なんせ、ストレスで記憶がなくなったとかなんとか言ってたよなぁ。完全に俺のせいだよな。
隆太はそう思いながら布団から出て、顔を洗い、髪の毛のセットにかかった。
--今日は大学の入学式だってのに。うまくいかねぇな。
どうやら、髪の毛をうまくセットできてないらしい。
--これも全てあの女のせいだ。あの女さえ夢に出てこなかったら。
最近、隆太はそう思うことが多かった。それは、度々夢に出てきて、あの時の記憶を思い出してしまうからだ。
--確かあの後、先生に殴られ、親父にも倒れそうになるまで殴られたな。嫌な思い出だ。
家を出る時間がせまっていたため、不機嫌なまま、外に出たのであった。
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