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やはりというべきか、食堂は学生でごった返していた。ちなみにここは大学内に四か所存在する食堂の中で二番目に大きい。
「どうする? 席取っておくか?」
「並んでいる間に人も空くでしょ。もう昼休みも半分過ぎたし」
三限がある学生は抜けていくだろう。現たちは三限がないので急ぐ必要もない。
「そっか、じゃあ並ぶか」
配膳コーナーにも行列ができていた。お盆を持って列に並ぶ。待っている間、三人はくだらない雑談で時間を潰した。
「いいよなぁ、お前らは。顔も声も似てるから代返してもばれないだろ」菊池は冗談めかして言った。
「いや、この大学ICカードで出欠取るから、代返も何もできないでしょ」真面目な現は菊池の冗談にもちゃんと返してくれる。ちなみに虚はくだらないことには基本無視している。
そんなこと話をしている間に列は次第に消化されていく。現たちの番が回ってきた。少し背伸びをして頭上に貼ってあるメニュー表を見上げる。大学の規模に合わせてか、メニューは充実している。
「二つ頼んで半分こしよう」虚が提案する。
現も決めあぐねていたので無言で頷く。
現はロコモコ丼とココナッツミルクの寒天、虚は海老とトマトのパスタにグレープフルーツ、菊池は普通に野菜炒め定食を頼んだ。
彼らが会計を終えるころには食堂の人口密度も薄まってきた。化粧の濃い女子学生のグループが退席したのでそこに座る。
背の高い割に菊池は少な目――というよりも質素だ。
「貧乏学生の財布にはきついんすよ。今月はテスト期間だからバイトも入れづらくてね」乾いた笑いを浮かべる。「だから……ねっ」視線を双子の方に向ける。下手なウインクをする。
「分けてあげようか」現は呆れたように言った。
「ありがとう心の友よ。バイト代入ったら何か奢る」菊池は一変して顔を輝かせる。二人から海老とハンバーグを少し分けて貰えた。最初からこれが狙いで二人を誘ったのかと邪推してしまう。
「現、目玉焼きの黄身は崩さないでね」「分かってるよ。けど難易度高いよ、その注文」目玉焼きは完熟派なのだ。
半分ほど食べ終えたところで二人はトレーごと交換する。
「海老、最後の一つ食べる?」現が尋ねる。
「うん」虚が頷く。
「はい、あーん」小さな口を開けた虚に食べさせる。
「目の前でいちゃつかれますとね、胸の奥がむかむかするなぁ。なんでだろうな」菊池が嫉妬の混ざった眼孔を向ける。
「「胸やけ?」」気づかない二人は仲良くはもる。
「恋煩いだよ、コノヤロー」
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