プロローグ

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 現(うつつ)と虚(うつろ)は双子の兄妹。  外面は鏡映しのように線対称、だけれどその内面は心臓を中心に点対称。同相であって合同でない。  現に宿るのは果てしなく無気力な衝動。  虚に宿るのは叶えがたき空虚な依存性。  現はくだらないほどリアリスト。現実の出来事をありのまま受け止める。仕方のない現実だと吐き捨てる。  虚は愚かしいほどロマンチスト。虚実の夢を戯画的に創り出す。叶わない虚実でも夢想する。  目が覚めて最初に目にするのは虚であった。隣にいるのが当たり前。  眠りにつくときいつも隣に現がいる。そうでないなど夢にも思わない。  二人は二人。常に一緒。  同じ時を過ごしている。  同じ生を分かち合う。  血より濃い絆で結ばれた双子。  二人は焦がれる。同じ顔をした片割れに。  禁じられた気持ち。歪まされた感情。  現実を生きる少年と虚像に潜む少女の絶対領域。  そんな二人の物語。
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