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1-1
そこは県内某所にあるタワーマンションの一室。寝室の中央に設けられた淡いクリーム色のセミダブルベッドの上に幼げな顔が二つ並んでいる。寄り添うように眠る二人の顔は鏡写しのように似通っていた。
それもそのはず。
彼らは双子の兄妹。同じ遺伝子を持つ者同士。寝顔が瓜二つでも不思議ではない。
「PPPPPPPPPPPP――――」
枕元のベッドキャビネットに置かれた目覚まし時計が電子音を鳴らし、朝を知らせる。十秒ほどの間を置いて、双子の片割れ――現が気怠そうに手を伸ばし、目覚まし時計のアラームを止める。静かになったデジタルの文字盤を見ると、すでに七時を回っていた。
現はまだ眠っていたい衝動を抑え、起き上がり大きく伸びをする。時計の横に置いてあったリモコンを操作すると、カーテンが開放され、一面ガラス張りとなった窓から朝日が差し込む。
その光を浴びて、隣で寝ていた現の妹――虚が身震いする。
「ウツロ、朝だよ、起きて」
現は布団に潜り込んでまだ寝ようとする彼女を揺すり起こす。彼女は小さく唸ると目を開いた。ぱちぱちと瞬きをすると、ぼやけていた視界のピントが合わさり、二人の視線が重なった。現が虚を見下ろし、虚が現を見上げる形だ。
「おはよ、ウツツ」半開きの眼で朝の挨拶をする虚。
「おはよう。今日もいい天気だよ」現は彼女の頬を優しく撫でる。
「ほんとだ。雲一つないね。眩しすぎるよ」
虚は日光から目をそらすように現のお腹に顔を埋める。
「ほら、もう起きるよ。大学に遅れちゃう」
現は虚の腕を掴んで無理やり起こす。
そのまま引っ張られ寝室を出て洗面所に向かう。
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