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「~っ、で、何でここにいるわけ?」
「え?だって好きなものを描けって、先生が。」
「くらげ~、お前顔は可愛いのにもったいねぇよ?」
気怠げに、描くことを放棄して紙パックのジュースを飲んでいる三谷くんに、
「聞いた!?渡!可愛いだって!」
「あ~そりゃそりゃ、良かったねぇ。」
「もーうっ!つれない!つれなさ過ぎる!」
「ちょっ、絵の具飛ぶからマジやめて。」
「本当、くらげちゃんに渡くん。二人で一組だよねぇ。」
クスクスと微笑ましそうに笑ってくれる南條ちゃん。
「ねぇ!聞いた!?渡!」
「はいはい、聞こえてるよー。良かったねー。」
私は、知っている。新入生代表で挨拶をしたその人が、その日の帰り道、土砂降りの雨の中。段ボール箱にいれられた子猫に傘を差し伸べたことを…。
渡は傘を置くと走って行ってしまったから、私がいたことには気づいていないんだろう。だから、私だけが知っている彼の優しさ。…秘め事だ。
(…彼女も知ってるのかな。)
そう思うと矢庭にお腹のあたりがむずむずしたので、考えることをやめることにした。
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