必然の子

2/15
133人が本棚に入れています
本棚に追加
/80ページ
そう言って夫は、受話器を置きました。 私と倫太郎さんに、大丈夫だから、心配ないからと言われた詩野さんですが、なぜか不安な表情は引きませんでした。 「嫌な予感がするんです。」 私と夫は、顔を見合わせました。 「二度と紳太郎さんが、この家に帰って来ないような気がして……」 私は思わず、詩野さんを抱き寄せました。 「……そんな事、ありませんよ。」 自分にも、言い聞かせていました。 紳太郎さんは絶対帰って来る。 そう信じて。 でもそれは、期待外れに終わりました。 翌日、紳太郎さんはこの家に帰って来ず、その代り友人の宗佑さんがやってきて、紳太郎さんが事故に巻き込まれ、しばらく知り合いの家に厄介になると、伝えて来たのです。 私は愕然としました。 詩野さんの『悪い予感』が、当たったんです。
/80ページ

最初のコメントを投稿しよう!