必然の子

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必然の子

その日の夜。 夜更けになっても紳太郎さんは、帰っては来ませんでした。 「どうしたのかしら。」 詩野さんは、茶の間と玄関を行ったり来たりして、紳太郎さんの事を心配していました。 「落ち着いて、詩野さん。」 私は何度も何度も行き来する彼女を、宥めていました。 「このまま、帰って来なかったら、どうしましょう。」 詩野さんのその言葉に、私も不安になりました。 あの時、私を扇情的な目で見降ろしていた紳太郎さんが、今はいない。 不安で不安で仕方のないこの気持ちを、詩野さんに伝わらないようにするのだけで、今の私は精一杯でした。 夜中になっても帰って来ない紳太郎さんに、詩野さんは立ち上がって、電話の受話器を取りました。 「詩野さん?」 「もう待っていられません。警察に捜索願いを出します。」 その時夫が、詩野さんから受話器を取り上げました。 「落ち着きなさい。今まで紳太郎が帰って来なかった事は、1度や2度だけではなかった。明日になれば、ふらっと帰って来るよ。」
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