12.

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「……どうだ? 何か出てくる気配はあるか?」 「いいえ、この空間にはもう何もないわ。きっと他の道が何処かにあるはず。第二の試練は別の場所よ」 「なるほど」と頷き合い、巨人の消えた岩のドームを見渡せば、確かに降りてきた階段の対向側に真っ暗な闇がぽかりと口を開けていた。 恐らく更に深部へと下る階段であろう。 迷わずその縁に立って見下ろすと、雪の山肌をなぶるような冷ややかな空気が、寂然と三人の顔を出迎えた。 「……くそっ、何も見えねえな。一滴の光も漏れてない」 「あの精霊達は、もう還しちゃったのかい?」 「私達(わたくしたち)気息奄々(きそくえんえん)でございますわっ。つって、戻っちまったぜ。俺が先頭で炎を宿して降りるから、クロエが続いてリアムは後ろだ」 「分かった」 前でクスクスと笑うクロエの背後で、リアムは力強く頷いた。 人ひとり分ほどの幅しかない階段を、手で触れる岩肌の感触を頼りに降りていく。 急な勾配と一段の幅の狭さとで、何度も踏み外しそうになり、時折三人の短い悲鳴が響く。 身の縮む思いでゆっくりと確実に歩をすすめた。 やがて辿り着いたのは、藍鉄巨人のドームと同じ広さの空間だった。 「いるね。今度の気配も、随分と巨大だ」 「残念だけれど、私は何も感じないわ。恐らくカレアム様に作られた、術の容れ物に過ぎないからだと思う」 「まあ何にしろ、似たようなのがいるってこった」 サーフェスはそう言いながらも、右手に宿した炎を急速に膨張させた。 そのまま腕を天井に掲げて、闇を冴え冴えと照らし出す。 空間に潜んでいたのは、藍鉄巨人と寸分違わぬものだった。 「変わり映えしねーなあ! カレアム様には物創りの才能が皆無とみた」 「きっと聞こえてるよサーフェス。戻ったらとんでもなく叱られるよ」 「そうだ、叱られるためにもさっさと戻らなきゃな。リアム、行けるか?」 「もちろん」 互いが巨人を見上げての会話を終えるや、リアムは直ぐ様地を蹴った。 リアムの動きを察知した巨人の腕が、天井に届かんばかりに振りかぶられる。 それが半分も降りない速さで、デオスの一閃が胴体を斬り付けた。 「うわっっッ!!」 「どうしたっ?!」 「リアム?!」 着地と同時に片膝を着き、身体を丸めてうずくまった。 叫びながら近寄って来た二人の背後に、巨人の腕が迫る。 リアムは瞬時に身体を起こし、クロエを抱いて飛び退いた。 岩の地面が砕け散る。破片がリアムの頬を掠って、小さな傷を作った。 「どうしたリアム、平気か?!」 反対側に避けていたサーフェスが声を張った。 「ちょっと今回はキツイかも!」 「ああ?! どういう意味だそりゃ!」 「とても硬いんだ! たった一撃で腕が痺れて使い物にならないよ! デオスじゃなかったら折れてたかも!」 「なんだって?! 軟化の魔法はかけてるんだぞ?!」 「多分全然効いてない! 効いてたとしても、100が99の程度だよ!」 再び落ちてきた腕を交わし、(ようやく)くサーフェスの隣りに並んだ。
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