12.

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リアムはサーフェスと顔を見合わせた。 もしや、と些少ながらも抱いていた事柄を、クロエが明言したのだ。 藍鉄の巨人の動きはまるで間緩(まぬる)ささえ覚えるほどに緩慢で、動き始めと到達点が手に取るように分かった。 かといってその怪力は損なわれておらず、リアムが避けたその後は、岩壁も地面も粉々に抉り取られる。 直に受ければ無事では済まないだろう。 高揚する心気を抑えながらも、試すように戦っていたリアムだが、クロエの言葉で確信を得た。 強くなったのだ。リアム自身が。 格が違うのだと諭されたあの夜から、もう二年近くが経とうとしている。 背丈も随分と伸びた。 サーフェスとは並び立つようになり、クロエとは頭一つ分を裕に超えるまでになった。 顔に精悍さが増し、華奢だった身体つきもほどよく筋肉が乗り、幼さが目立った少年から青年へと変貌を遂げた。 二年の旅路を経て、ニーズヘッグとファフニールの支配を叶えたリアムは、あの夜とは明らかに違うのだ。 リアムを薙ぎ払わんと轟音と共に回された巨人の腕を、素早い跳躍で避けた。 空を振り切った巨人の腕の上に、トンと着地する。 それを肩まで勢い良くつたって駆け上がり、そこから更に跳躍した。 「ハッッ!!!」 跳び上がった先でデオスの切っ先を真下に向けた。 落下の勢いに任せて、巨人の脳天に突き刺した。 確かな手応えがあった。 深々と刺さったデオスによって、巨人の頭はひび割れた。 その隙間から煌々と光が洩れ()で、やがて洞穴内に溢れたかと思うと、瞬時にして巨人は砕け散った。 「やった!!」 着地したリアムは大きく右腕の拳を掲げた。 「よし!」 サーフェスも興奮気味に頷いた。 三人は駆け寄って背中を付け、次なる変化を待つべく構えた。 どうなるかは分からない。これから先は未知だ。 ただ一つ言える事は、アンフィスバエナに近付いたという事実で、それが最も重要な事柄だった。
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