1.letter

23/45
前へ
/45ページ
次へ
部屋に入ると、ぼふっとベッドに倒れこむ。うとうとして寝そうになったけど、風呂入んなきゃって、思って起きた。あとで、また創子さんに会うんだから。 風呂に向かうと、母さんとすみれがうきうきとケーキを買いに行くところだった。 「お兄ちゃん、何がいい?」 「あ~っ、すみれが悩んだやつの片方でいいよ。」 いつも妹はなかなか一つに決められないから、悩んだ一つを俺の分ということにして買う。そして、一口という名の半分をやる。別に甘いものが苦手ではないけど、妹が喜ぶから昔からそうしてきた。それを知っているかあさんは、クッキーなどの焼き菓子を俺の分にと買っておいてくれる。 「じゃあ、イチゴかチョコかどっちがいい?」 今回はショートケーキとチョコレートケーキとモンブラン辺りで悩むのかな。 「じゃあ、イチゴで。」 「はーい。じゃあ、行ってくるね。」 「よろしく。気をつけて。」 かあさんと妹を見送ってから、シャワーを浴びる。風呂から出て、スウェットパンツ姿で髪を乾かす。母さんの血を濃くひいたのか、色素が薄くて細い髪の毛。あっという間に乾く。瞳の色も青みがかっている。当然肌も白い。顔立ちは悪くない。 今は、髪を 染めたりカラコンを入れたりするのは珍しくない。でも、俺が中学生のころは、こんな地方都市では、攻撃の対象になった。髪を染めているだの。オカマっぽいだの。いろいろと言われた。 始まりは、ちょっと目立つ女子に告白されたことだ。
/45ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加