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「ただいま~」 かあさんとすみれが帰ってきた。 昔のことを考えていたら、けっこう時間がたっていた。スウェットの上は裸だったことに気づいて、慌ててTシャツを着た。 「お兄ちゃん、イチゴのタルトにしたけど、良かった?」 「いいよ~どうせ半分はすみれが食べるんだから。」 「その通り。いいじゃない、受験勉強頑張っているんだもん。」 「そうだな。エライエライ。」 「でしょう!でも、お兄ちゃんと同じ学校には行けないなぁ。」 「げっ、同じ大学はやめてくれよ。」 「ひどい。たった二人の兄弟なのに…」 「まぁ、学部が違うから、いいけど。すみれは数学が致命的だからな。」 妹は文系だ。だから、理工学の俺とは同じキャンパスにはならない。すみれの数学の成績は、数Ⅲと数Cになってから下降の一途だ。なので、まぁ、同じ大学でもいっか、と思う。 俺は、3才離れた妹を大切にしている。きっと、俺のことがなかったら、俺と同じ中学に通っていたはずで、小学校からの友達と離れずに済んだはすで。 それをどう思っているか、聞いたことはない。我が家では、あの2年間のことはタブーになっているから。
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