1.letter

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「ピンポーン」 当たり前だけど、うちと同じチャイムの音が響く。 ガチャ ドアの開く音。これもうちと同じ。 「こんばんは。お疲れさまでした。」 創子さんが笑顔で迎えてくれた。つきあえたら、こんな風に過ごすのだろうか。まだ、告白もしていないのに想像してしまう。 「こんばんは。突然にすみません。」 手みやげに持ってきたビールとつまみ、バイト前に買っておいたお菓子などを手渡す。 「あら、悪いね、ありがとう。上がって。」 「おじゃまします。」 「夜ご飯は食べた?」 「あっ、休憩中に軽く。」 「じゃあ、藤くんが買ってきてくれたものを一緒に食べようか。」 言いながら、テーブルに並べ出した。ついでに、夕飯の残りのおかずも並べてくれた。 「お疲れさま~」 缶ビールを開けて、乾杯をした。 いきなり本題を話す勇気がなくて、雑談で間をもたす。 「今日も遅かったんですか?」 「う~ん、夕飯の買い物したり本屋に寄ったりしたから、9時くらいかな。」 「仕事、楽しいですか?」 いやいや、こんなこと話に来たんじゃないよな? 「ふふ、楽しいよ。怒ることも多いけど、同じくらい笑うこともあるし。今、1年生でチビッ子なんだけど、かわいいよ。」 「そうですか。創子さんが笑ってるの想像できます。」 「ふふ、すごい怒ってるときもあるよ。藤くん、ひくよ。」 「マジっすか。見たいかも。むしろ怒られたいかも。」 ボソッと呟いたら、創子さんがビックリしていた。 「君はMだったのか。昨日はそんな感じしなかったけど。」 しれっと昨日の話をされた。 「すみませんでしたっっ。」 テーブルの横の床に額をつけて謝る。 「分かっているよ。昨日のことは忘れたよ。」 頭の上から、創子さんの穏やかな声が聞こえた。 えっ、そういうこと?違うって。 「ち、違います。俺、そういうつもりじゃなくて、いや……そ、そういうことしたけど……」 テンパってきた。俺は、話すのが苦手でよくどもったり言葉が出なくなったりする。あのいじめからだ。 しばらく、一人で頭を抱えている間も、創子さんは黙って待ってくれた。 「忘れないで下さい。俺、好きなんです。前から、結婚しているときから。」 言った、言っちゃった。 反応がない……やっぱり……だよな。 おそるおそる創子さんの顔を見る。
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