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飲みに行く前に、借りていたDVDを返さなければ。しかも、まだ観てなかったから、時間に間に合うように倍速で観た。
見終わるとケースに収めて、出掛ける準備をする。まぁ、特に無し。学校用のリュックから、斜めがけのバックに変えるくらい。あと、ニット帽を被って、部屋を出る。
「かあさ~ん、俺、もう出るね。啓祐と飲んでくるから、遅いかも。」
「はーい、いってらっしゃい。啓祐くんによろしく。あと、飲み過ぎないようにね。」
この前のことがあるからか、にこやかに釘を刺された。
「分かってます。気を付けます。では、行って参ります。」
妙な敬語になりつつ、家を出た。
エレベーターで一階まで降りると、ちょうどエントランスに入ってくる創子さんが見えた。
ラッキー!創子さんとはこの手の偶然が多い。運命かな~なんて、顔がにやける。奥歯をぐっと噛み締めて、努めて何でもない顔をして近づく。
「おかえりなさい。今日はちょっと早いですね。」
「あっ、藤くん。こんばんは。今日は参観授業があって、疲れたから早めに帰って来ちゃいました。」
そういえば、いつもよりきちんとした格好だな。黒のスーツにブルーのVネックのニット。首にはグレーのストール、とネームカード。
「1年3組 担任 小野寺 創子」
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