2章

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 朝になり、就寝してから二度も赤子のミルクに起こされた私の頭は、疲れがどしっと脳みそに詰まっているためか、枕から頭を離すのが非常に気怠かった。昨日はたまたまアルバイトが休みだったが、私は最低でも週に五日は仕事に行っていた。しかし子どもができてしまった今、私は今まで通り仕事に行くことができるのかを不安に思った。 私はとりあえず、車に乗って三十分程のところにある実家に、子どもを預けることにした。車の中に昨日買ってきた新生児の生活必需品を積む。そして私はチャイルドシートなど持っていなかったので、誰にも言えないような方法で、赤子を車に積んだ。  最初母に赤子を見せたとき、母は驚きの表情を露骨に出した。  ちなみにここで私の家族構成について述べておくことにするが、父親は昔、私がまだ幼いときに、私達を残し他の女を連れて何処かへと逃げてしまったらしい。私が幼い頃から酩酊した母が、よく私に涙ながら、父の愚痴を溢したものだ。私は母と父が結婚する前に世に命を授かった一人息子だ。そして私の実家は実家と言っても一軒家ではなくて、低所得者向けに地方公共団体が賃貸する公営住宅だった。要するに父のいない私の家は、目立つ程な貧乏ではなかったけれども、裕福に暮らせるほど多くのお金がなかった。
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