2章

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 話は戻って、私は母に偽った事情を説明した。私が連れてきた赤子を、私は片親の友達が急遽、入院することになってしまい、その友人にこの赤子の面倒をみてもらえる身内の縁がないので、私がこの赤子を友が退院するまでの間、育児することになったと私は母に伝えた。そして私は自分が仕事の間だけ、この子の面倒を見て欲しいと母に頼んだ。私はそれだけを伝えたら、母の水分をたくさん含んだ雨雲のような表情に気づき、質問の嵐から逃れるように、時間がないからと言って必要なものだけを母に渡し、その場から素早く離れたのだった。  仕事中、私を襲う睡魔を凝視すれば、それは醜い赤子の顔をしていた。この眠気も、自分の子を可愛いと思うことができたのならば、きっと大切なものを守る一家の柱として、心のどこから湧いてくるのか分からない頑丈とした精神で、睡魔と立ち向かうことができるのだろう。しかし私にはその精神が理解できなかった。これは自分の子を大切に思えない私が悪いのだろうか。それとも悪いのは、雀の涙程にも親に愛情を注いでもらうことのできない、私の子どもなのだろうか……
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