3章

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3章

 赤子を預かってから一カ月が経とうとする頃、赤子は見る見るうちに成長していった。最初赤子と出会ったとき、赤子はピンク色の肌をしていたが、日が経つにつれ肌の色が黄色っぽくなっていき、今では、私の肌にたっぷりとゼリーを塗りたくったかのような、瑞々しい肌色になっている。頼りなかった身体の全身には肉がつき、赤子は丸々としていた。けれども顔立ちが不細工なのに変わりはなくて、やはり私は赤子のことを一度も可愛いと思ったことが未だにない。大きな餅の塊に、世界で一番不細工な猿の頭を突っ込んで型取った跡のような、複雑な顔つきをしていた。それに醜い顔が大きくなって醜さがなくなる訳がない。醜い顔面は大きくなって更に醜くなったというわけだ。  ある時、母が私に「龍君の鼻があんたに似ている気がするわ。」と言ったことがある。私は思わずむっとして、「どこが?」と尋ねたが、母が言うには鼻が少し高いところに、私との共通点があるらしかった。ちなみに「龍君」とは、私がこいつの名を尋ねてきた母のために、私が自分の名前から漢字を一文字取って分け与えた名前だった。母は「あんたと同じ漢字なのね。」と言って笑った。  またある時には、子どもがきっかけで久しぶりに帰ってくるようになった狭い部屋で、座りながら赤子を抱いている母が、「この子の手の平に指を触れてごらん。」と私に言ったので、私は恐る恐る母の言う通りにしたら、何と赤子が私の指をぎゅっと掴んできたので、私は反射的に指を赤子の手の平から力強く引き抜いてしまった。その時、「何て顔をするの。」と私は母に責められたのだった。
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