5章

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5章

 梅雨も終わりを告げて、次第に暑さが服を濡らすことになる七月、赤子はますます大きくなり、胴体の筋肉がしっかりとしてきた。  私は常、床にこの赤子を放って置いている。私は赤子が、私なら耐えられそうもない暇さに、死んでしまわないかと思ったりもした。確かに赤子は退屈さを紛らわすためか、仰向きの身体を横に向けようと必死に身体を動かしているかと思えば、頼りなさそうな下半身を捻じらせ、寝返りを打ちそうになることもあった。また、身体を力いっぱいに動かしていないときは、自分の小さな手の平を己の目の前にかざして、それを何だろうと考え込むかのように、じーと眺めていることがあった。そして赤子は右手の親指を口に入れて、やはり不細工な様で吸い付くのだった。  七月に入ってからは一日が経つごとに暑くなっていく。そのためか自分の子どものオムツを変えた時に、赤子の尻に赤い斑点の出来物ができていることがあった。私は赤子の排出物のついたオムツを取り替える時間が最も嫌で、いつも成程、この赤子からでてきたものだと納得のできる、悪臭を放つ排出物を眺めては気分を悪くするのだった。だが、この赤いブツブツは何だろう。暑さのせいでオムツの中が蒸れているのだろうか?だが私は一切それを気にすることはなかったし、そのニキビのような、尻に斑となってできている出来物は、数日後、それ以上増えることもなかった。ただ私は、もしも私がまともな親であれば、この出来物を見て、どのような処置を取ったのだろうかと考える。きっと可愛い我が子を思うのならば、赤い出来物一粒でさえ懸念して病院に向かうことが普通だろう。それに比べて私は、きっと私の子どもが苦しむのを目にしても、それが死を漂わせるものであったとしても、きっと、私は全く何も感じないはずだ。 
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