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「おやおや、人様の女に手を出すとは…いい度胸だなぁ?センパイ?」
「……ぇ?」
「へぇ?彼女は君の彼氏なんだ?ってか俺のこと知ってるみたいだけど、誰?」
「お、お兄ちゃん!?こんなとこで何してんの!」
「そりゃこっちのセリフだバカ、お陰で随分と走らされたぜ」
「あっはっはっは、彼女のお兄さんだったんだ、俺の女とか言うから彼氏かと思ったよ…とんだシスコンだねぇ、君」
「はっ、だーってろよ、いろんな女に手を出して学校に苦情がたくさん来て退学食らったセンパイよりゃマシだろ?あんたうちの学校じゃ有名だぜ?」
「ふーん?それで?どうやって連れ戻すのかな?」
「いや、普通に連れ戻すだけだよ。俺は手荒な真似はしたくないし、喧嘩とかごめんだからね。後はお巡りさんの出番だよ」
「けっ、そうかいそうかい、卿が削がれちまったよ。女は返してやる、ただ、次にそんな顔をさせるようなら、俺がまた彼女の手を掴む。精々仲良しこよしするんだな、シスコン野郎」
そう言って彼は私の手を離し、背中を軽く押した。
そして小声で一言「応援してるぜ」と囁いた。
タチの悪いナンパ野郎じゃなくて、ただ、女の人を放って置けないだけの、不器用な人なんだな。
頑張るよ、名前も知らない先輩さん。
「……お兄ちゃん、ごめんなさい」
そう言って私はお兄ちゃんに抱きついた。
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