武智勉の決断

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武智勉の決断

 大学は春休み真っただ中。  金の無い俺はおんぼろアパートの自室でごろごろしていた。  こんな時、ふらりと現れるのは決まって後輩の武智勉(たけちつとむ)だ。整った顔立ちをしているのに、髪はぼさぼさ、シャツもジーンズもよれよれで見てくれはあまり良くない。イケメンの無駄遣いとはこの事だ。 「暇っすか」 「いや、ごろごろするのに忙しい」 「マジすか。じゃあ、差し入れは一人で食べるか……」 「バカ、早く上がれ。お前なら大歓迎だ」 「清々しいほどにクズですね」 「空腹は人を変えるよ」 「満腹でもクズでしょうよ」 「うるせぇ。良いから食い物寄越せ。昨日から何も食べて無いんだから」 「へいへい」  大体お決まりのやり取りをした後、武智は部屋にあがってきて、こたつの上にコンビニ袋を置く。中には菓子かパンかカップ麺が入っているというところまでがワンセットだ。
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