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この日は菓子パンが三つ入っていた。
「いつもすまないな」
「そう思うならたまには先輩らしいことをしてくださいよ」
「大体の場合先輩らしいと思ってるけど」
パンを齧りつつ真顔で返すと、武智は大きなため息を吐いた。失礼な奴だ。
「知恵貸してください」
「それなら一応持ち合わせてるな」
「これなんですけど」
そう言って彼が取り出したのは一冊の通帳。武智本人の物であるらしく、カタカナで奴の名が印字されている。
「なにこれ?」
「まあ見て下さいよ」
言われるままに通帳を見ると、結構良い金額が記載されている。
「……三十万以上あるじゃないか」
「お年玉貯金何なんですよ、俺の」
「え、お前いくつだっけ?」
「二十一っす」
「てことは何? 単年のお年玉で一万円を突破していた時期があるの?」
「何軒か貰うから、そうなるっしょ?」
「俺、なった事ないよ?」
「マジっすか。どんだけ愛されてないんすか」
「バカか。愛は貰ったわ。ただ、気持ちが大事だから、金額は二の次と言われ続けていたのは確か」
「騙されてますねー」
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